ある学校の校舎が、壊されて新築されるという。 別に何という事はない話しではあるが、問題がないわけではない。 確かに古くなった校舎ではある。 でも、新しく校舎を建てる場所がないのではない。 あなたの座っているその席に、別の人を座らせるから、あなたそこをどきなさい。 古くなったその校舎の階段は、カドが取れて丸くなっている。 でも、その階段を父が……祖父が歩いたという事実は、学校の先生が教えない事を、校舎は無言で何かを教えてくれている。 古くなったから壊す。 その考え方は、古くて役に立たなくなったらもう必要ない。 古いものは、役に立たないから必要ない───と同類であろう。 古くなって役に立たなくなっても、何とか他に役に立たないか………皆で一所懸命に考えていた時代は、もう古いのだろうか。 しかし、しかしである。 古くなったら捨てる───それは、いつかは新しいものも捨てられる運命にあることを示唆していることを、どれだけの人が知っているのだろうか。 |