お線香の話

 皆さんが良くご存じのように、お寺参りをする時・仏壇に手を合わせる時、お線香は無くてはならない必需品です。
 三宝さまに供養する場合、お線香が無いと何とも格好がつきませんが、その意味するところは一体何なのでしょうか。
 マッチで点火してジッと見ていますと、お線香は少しずつ燃えて下がっていき、ついには全部灰になってしまいます。
 一度真っすぐに立ててしまえば、無くなるまで燃えています。
 普通、家庭で使っているものは、おおよそ三十分ほどで燃え尽きるものが多いのですが、その線香から出ている煙の変幻自在な様もさることながら、強い風が吹いても消えてしまうような気配はありません。
 一本の線香は、周りの環境がいかように変わりましても、少しもひるまず一服することもなく変わらぬ速さで燃え続けます。
 そこで、ある人は、このお線香が最後に無くなるまで燃えていく姿を捉えて、『精進』ということを象徴するのだと教えています。
 精進というのは、最後までやり抜く・頑張り通す、という意味ですが、実際にお線香に火をつけてみると合点できます。
 人の一生の間には必ずといってよいほど苦難の山坂があって、それを一歩ずつ乗り越えて行かないと人生の喜びを得ることは出来ません。
 そういう場面に遭遇した時、信仰に支えられて灯された一本の線香の意義は、すこぶる大切なことを教えてくれていると思います。
 毎朝、仏壇に向かって手向けるお線香を見ては、目標に向かって頑張り通す。
 どんなに辛く惨めなことがあっても一貫してやり抜く、という強い勇気を与えてくれていると感じたいものです。