昔々、ある村に兄弟が住んでいた。
ある日、ロバに野菜を積んで町に売りに行った。
夕方も近くなる頃、野菜が全部売れたので、村を目指して家路についた。
しばらくすると、一人の旅人とすれちがった。
旅人は、「なんと要領の悪い兄弟なんだろう。
ロバに何も積まないのなら、だれか乗ったらいいのに」
言われてみるとその通りである。
「お兄ちゃん乗りなよ」
兄がロバに乗って道を進んだ。
二人目の旅人と行きあった。
「兄のくせに、まだ年端もいかぬ弟を歩かせるなんて、愛情のないヤツだ」
兄は急いでロバから降りると、「今度はお前が乗れよ」と言って、手綱を引いて歩きだした。
すると、三人目の旅人と出会った。
「弟のクセに、偉そうにロバなどに乗りおって、年上の者を敬う気持ちはないのか」
弟は恥ずかしそうにロバから降りて、兄弟で相談をした。
「そうだ、二人一緒に乗れば、文句を言われることはあるまい」
二人が、ロバに乗って夕暮の道を村へ向かい始めた。
四人目の旅人がやってきた。
今度は何も言われまいと思っていたところへ、「小さなロバに二人も乗りおって、ロバが可哀相だとは思わんのか」
兄弟は、思惑がはずれてしまった。
恥ずかしそうにロバから降りて、さて、どうするかと考えた。
残された道は、ただ一つ。
兄弟は、ロバをかついで歩いた。
---という寓話がある。
なんと主体性のない兄弟なんだろう。
自分たちの考え方さえシッカリしていれば、誰が何を言おうと気にする事はないのに。
事情も知らない旅人に何か言われたら、経緯をひとこと言い返してやればいいのに。
いろいろな意見があるだろう。
あえて付け足せてもらえば、自分なりの生き方をシッカリと持って、あまり周囲の目を気にしないで生きたいものである。
さらに、事情も分からないで他人の事について、とやかく言わない方がいいだろう。
汚い言葉であるが、「目クソが鼻クソを笑う」とか、「自分の頭のハエを追わないで、人のハエを追う」ようには、なりたくないよね。