自然が段々遠くなる

 日本列島の自然は、今どうなっているのであろうか。
 戦後GNPを追っかけ、素晴らしい経済発展を遂げてきた。
 だが、その引き替えに急激な環境破壊が進んだのが現実である。
 山林を伐採したり、山上まで道路を作ったりして、幾多の野性動物たちの居住域を狭めていった。
 また、河川改修や農薬をばらまいた為にフナやメダカ、ゲンゴロウ、ミズスマシなども著しく減少していった。
 昔、我が国には身の回りに自然が満ちあふれていた。
 山が紫色に見えたのは、古来から檜が多かったので「山紫水明、花鳥風月」と表現されてきていた。
 現在では植林が進み、緑を増やそうという運動が高まってきた。
 だが、海岸線はコンクリートで固められた人工海岸が七割も占めて見る影もない。
 渚は、天然の浄化作用を行い、洗浄の役目を果たしていた。
 一方、大気汚染では光化学スモッグが発生し、夜空に輝く無数の星群を見ようとすれば大変だ。
 生活汚水などで、内湾では赤潮が発生したり、乱獲などで魚や貝、海藻類などの海の幸の水揚げ量も減ってきた。
 このように自然が段々遠くなるにしたがって、自然に楽しみ近づこうという欲求も深まりつつある。
 海水浴、日光浴、森林浴からスキーやハイキングなど、多様なスポーツやレジャーも盛んになってきている。
 農村地帯の夜空にホタルが飛び交うのは自然であり、田んぼにタニシがいてこそ価値がある。
 祖先から受け継いできた、かけがえのない故郷の自然は人間だけのものではない。
 無数の生物たちとの平和共存のための「水の惑星」であることを再認識する必要があると思う。