人間とは何か

 「人間とは、二本脚の動物である」と定義してみよう。
 確かに、犬・猫・牛・馬などが四本脚であるのに比べ、人間は二本脚である。
 だが困ったことに、にわとりも二本脚である。
 この定義では、にわとりと人間の区別がつかない。
 「人間とは、日本脚にして翼なき動物である」としても、最終の決着には達し得ない。
 「人間とは、社会的動物である」という定義ではどうであろうか。
 社会的という事が、共同生活という意味であるならば、蟻や蜂も、この定義に当てはまる。
 「人間は、感情的動物である」という定義はどうだろう。
 猿が、怒りの表情や恐怖の表情を示す事は誰でも知っているし、時には悲しそうな表情を見せることもある。
 牛や馬、犬や猫にも感情と言っていいような何かが、時に働くように見える。
 人間が、他の動物と違う特徴とは何であろうか。
 結局、アリストテレスの昔から、〃理性〃を選ぶことで一応皆が納得してきたようである。
 「人間は理性的動物である」
 しかし、すべての人間が「理性的」として規定されるに値するだろうか。
 現代に生きている人間だけを見ていても、非理性的な人間、あるいは反理性的な人間が、いたるところに蔓延っている。
 狂気、野心、激情、暴力、貪欲などは、すべて反理性的である。