目に見えない命

 目に見えないほど微細な生き物、いわゆる微生物には善玉と悪玉がある。
 食物を腐らせたり、病気を引き起こしたりする腐敗菌や病原菌。
 酒やチーズ、味噌などの嗜好食品や医薬品を生産してくれる発酵菌。
 どちらも人間の目には見えないほど小さいが、生命力は旺盛である。
 人間が、微生物の生命力を利用して有益なものを作り出すことを「発酵」という。
 さまざまな医薬品や化学製品も、有用微生物の応用によって発酵生産されている。
 もし、発酵という知恵に富んだ微生物の応用がなかったら、文明はかなり遅れていたに違いない。
 さらに、この小さな生き物たちは、地球上のあらゆる生物の生命を維持する役割も果たしている。
  地球上の動植物によるそう生産量は、年間一兆トン。
 もし、ここに微生物たちの働きがなかったら、地上はたちまち動物の死体や植物の枯葉で埋まってしまう。
 まさに、地球浄化作用の担い手である。
 多くの人間は、これだけ素晴らしい恩恵を受けていても、全くと言っていいほど彼らに無関心である。
 もっと、見えざる命にもその尊さを讃えるべきではないだろうか。