治に居て乱を忘れず

 最初のソ連大統領の訪日に関して、イギリスやフランスも、「ゴルバチョフ大統領は失敗 。てぶらで帰国」と同じことを述べているが、日本の経済界が、今度は我れ先にとソ連に飛び付く気配を示さなかった事が、私をホットさせた。
 歴史を振り返るまでもなく、ロシア民族は、その王朝の如何を問わず、領土的には異常なほど貪欲な民族である。
 文明という化け物のお陰で、世界、特に自由圏内の資源は殆ど開発・使用尽くされて来た。
 後に残るのは、ただ広大なソ連圏内と支那大陸だけである。
 もしも、本当に自由圏内の資源が枯渇すれば、その好むと好まざるに関わらず、ソ連・支那大陸の資源開発に至らざるを得まい。
 金融・経済・技術の援助をせざるを得なくなる。
 お陰で、ソ連も中国も労せずして国力は増し、経済は復興し、軍事力は飛躍的に増強されるだろう。
 トンボの中には、交尾を終わると雌が雄を食べてしまう類がいるらしい。
 経済的・軍事的に強大化したソ連、あるいは中国が、そのトンボにならぬという保証
はあるだろうか。
 熱帯地方に住む民族に、いくら「雪」について説明しても、観念的にはともかく、実際には理解できない。
 それと同じように、今、国は無く、追われているクルド人やパレスチナ、インドシナ難民こそ、真の「平和」の意味が理解出来るのである。
 血も汗も流さず「平和」が守れると盲信している平和ボケ野党を抱える日本こそが、何を隠そう亡国予定第一号民族ではなかろうか。
 「治に居て乱を忘れず」とあらば、憲法を改正して、半国家状態から脱却するのが現今の急務であろう。
平成3年 河口豊氏投稿