例えば、親の遺産を子供たちが相談する。 そこでの旗印は「公平・平等」である。 しかし、みんな境遇が違っている。 最後まで親の面倒を見た者もあれば、親と疎遠になっていた子もいる。 なかなか平等には行かない。 では、どうすれば良いのか………? そういうことを考えながら、牛乳のクイズを彼岸の智慧で考えてみよう。 「こだわらないこと」───それが彼岸の智慧である。 したがって、牛乳のクイズにおいても、私たちは「半分」にこだわってはいけない。 「公平・平等」にこだわってもならないのだ。 大事なことは、牛乳を半分にすることではなく───兄弟が仲良くする───ことである。 そう考えると、問題の解決が可能になる。 兄弟が仲良くするには、二人が牛乳を仲良く飲めばいい。 牛乳を半分にしようとすれば、かえって兄弟に不信感が生まれる。 そうではなく、兄弟が仲良くするために仲良く牛乳を飲むのである。 兄が弟に言う。 「弟よ、おまえの好きなだけ飲みなさい。 でも、ちょっとでいいから、お兄ちゃんに残しておいてね……」 「うん、ありがとう」 弟は、半分より少なく飲む。 そして、お兄ちゃんに牛乳瓶を渡す。 兄はそれを受け取り、また少し残して飲む。 「さあ、残りは全部、おまえが飲みなさい」 こうすれば、兄弟が仲良くできる。 これが彼岸の智慧であろう。 こうしなければ、兄弟は仲良くなれない。 此岸の知恵では、兄弟は仲良くできないのである。 遺産の分配だって同じである。 なまじ親が大きな財産を遺してくれたがために、それまで仲の良かった兄弟が不仲になる例が、それこそゴマンとある。 此岸の知恵でもって問題を解決しようとするから、そうなるのである。 遺産を平等・公平に分けようとこだわりを持つ───から問題がこじれるのだ。 凡夫の知恵では、問題を解決するどころか却って問題をこじらせてしまう。 私たちは、しっかりとこの事を確認しておきたい。 |