お墓は標べでもあります。
ここに御先祖様が眠っておられるということを誰にでも分かるよう示す施設のようなものと云えましょう。
と同時に肉体を大地自然に還す場所でもあります。
昨今では散骨や樹木葬というものも選択できるようになってきましたが、魂・遺体が埋葬・祀られている場所がお墓であり、つまりは聖地です。
昔人にとっては、現代の私たちより、死は身近なものだったに違いありません。
将来自分の身にも起きる逃れ得ぬものであり、怖れや命の不思議さを肌で感じたのだと思います。
その体験を通して、まだ生きているのに「自分が死ぬこと」を悟り、まだ若いのに「老いること」を知るのです。
身近な死・最期をどう受け止めるかは人それぞれですが、それを自分の身に被せて捉え、自らの生き方を真に見つめ直すことが出来ればと思います。
そういう意味では、葬儀・祀りは粗末にしてはいけない行事だと言えましょう。
寺報212号から転載