寺報コラムから

葬儀を営む意味

 『葬儀』と云えばお寺の専売特許みたいですが神道でもキリスト教でも『葬送儀礼』はあります。
 その宗旨・教えに則ったやり方で、土地柄や慣習などの違いはあっても、亡くなった人を大切に葬送するのです。
 根源には死に対する畏れとか尊厳というものが存在することは言うまでもありません。
 最近耳にするのが『直葬・直送(じきそう)』というもの。
 簡潔に云えば葬送儀礼を省略し斎場に直行して荼毘に付すこと。
 そうせざるを得ない事情を抱えていることもあり、これを一律に非とするのは難しいと考えています。

 葬儀は、亡くなった方が主役ですが、亡くなった方の意を汲んで、どんな葬儀にするかは喪主・御遺族の考え次第といえます。
 縁者・親戚の方々に、死別を交わす場を設けることは、見た目以上に大切なことでしょう。
 何人も死から逃れることは出来ません。
 しかし、死に対する思いは人それぞれ異なります。
 そして、人は死を常に直視できるほど強くはありません。
 だから日頃は忘れて生活すれば良いのです。
 時に、誰かの葬送で思い出させてくれるから。

寺報214号から転載