寺報コラムから

先師の功績

 「生涯で、師と仰げる人を三人は持て」と云われます。
 私にとって父日進師や祖父日省師は身近な存在ですが、黒住上人、太田上人、そしてもう一人の祖父日隆上人や叔父日明上人をあげることができます。

 日省上人は備前市久々井の出身で十歳の頃、本華院日心上人のもとに弟子入りされ、第四十世管長を継がれた。
 当時、我が宗に世襲制度はなく、弟子から弟子へと継承されていた。
 しかし、「このままでは後継が途切れるかもしれん」と日省上人は考えたそうで、祖母と何処で巡り会ったのか、結婚し家庭を築いている。
 我が宗は、今でこそ僧侶の結婚や世襲は認知を得ているが、当時は肉食妻帯の禁が生きている時代。
 管長であるにもかかわらず本山に居られないほど風当たりは強かったようだ。
 日省上人は三人の子をもうけたが母を含めて三姉妹。
 なかなか世の中、思うようには行かない。
 父日進上人は一宮の大覚堂(現=大覚寺)日隆上人の長男であり、日奥上人の「宗義制法論」に感銘を受け、半ば勘当という形で講門派に入門した単宗日蓮の若僧でした。
 どこで日省上人に弟子入りを掛け合ったのか聞いてないけど。後に、父に触発される形で叔父の日明上人も本覚寺に入寺。
 そして二人は講門宗を支える存在に。
 時代は移っても後継者問題はいつもあります。
 我が宗門寺院だけでなく何処にでも。
 日省上人のこの改革というか挑戦がなければ、母は居なかったでしょうし、父日進上人も本宗に入っていなかったかもしれません。

寺報216号から転載