寺報コラムから

終末期医療

 終末期医療の知見とともに人の体が最期を迎えた時、何が起きているのか医療従事者の話があります。

 大切な人を看取るとき此の知識が有るかないかで心の準備がまったく異なると云います。 まず、死の数週間前から数日前に現れるのが食欲の低下です。これ「食べられないから弱るのではなくて」体がもうエネルギーを必要としなくなったから食べなくなるのです。
 消化にもエネルギーが必要なので体が自然と其れを手放して行くのです。 だから、無理に食べようとしなくて良い。それは体の自然な選択なのです。
 同時に睡眠時間が極端に長くなります。一日のほとんどを眠って過ごすようになります。 これも体がエネルギーを温存している証拠です。
 また、死の数日前から二十四時間前、手足の先から冷たくなっていきます。 血液が心臓や脳などの生命維持に重要な臓器に集中するからです。 爪や唇が青紫っぽくなることもあります。

 そして、意識がぼんやりしてきます。 ここで興味深いのが「お迎え現象」。亡くなった家族や友人が見えると話をする人が多いです。 これは貧血による脳の酸素不足や譫妄による幻覚とも言われますが、不思議な体験をされる人もいます。そして、本人にとっては穏やかな体験であることが多いです。

 最後の数時間前に現れるのが呼吸の変化です。 チェーンストークス呼吸と言って、深い呼吸と浅い呼吸そして無呼吸を繰り返すパターンになります。また、喉がゴロゴロ鳴る自然喘鳴が起こる事もあります。  これは苦しんでいるように見えますが本人に意識がほとんどない事が多く、見た目ほど苦痛ではないと言われています。

 そして最後に残るのが聴覚。目が閉じていても耳は最後まで聞こえていると言われます。 人の体が死に向かう時、実は合理的に機能を手放していくのです。 抹消から中枢へ、外側から内側へ、まるでシステムを順番にシャットダウンするかのように。

 この知識があれば大切な人の最期に慌てずに傍にいてあげられます。  『何かしてあげなきゃぁ』ではなく、傍にいてあげることこそが一番の看取りなのです。 この話が誰かの心の準備になれば幸いです。

寺報276号から転載